ふたつのフクシマ

8月と9月、福島でふたつのジオラマを作りました。
飯館村と双葉町。3.11の原子力災害の、終点と始点とも言えるかもしれません。

【飯館村】
7月26日〜9月1日までの間、飯館電力(株)さん主催で福島市のギャラリー・オフグリッドにて開催されていた、小池アミイゴさんの個展「ハルカラ」。期間中の8月11日のイベント「誰でも絵が描けるワークショップ ~福島の飯舘村のデカい段ボールジオラマをシアワセ色に塗っちゃいましょうセッション~」にジオラマが登場しました。

いまなお多くの住民の方々が村外で避難生活を送る飯館村。その中で飯館電力さんは、ソーラーシェアリング事業を通じて農畜産業をはじめとした村の復興・再生に取り組まれています。
アミイゴさんが「ジャガイモみたいなかたち」と表現する飯館村は、ジオラマで見ると全体が山の中。農畜産業が盛んな往時のおだやかな様子が目に浮かんできます。

参加した子どもたちは東日本大震災も原発事故も知らない世代、飯館村の豊かな大地をキャンバスに、ただただ何かを描いていきます。色とりどりに塗られたジオラマの中には、動物の姿もちらほらと。子どもたちの目に、段ボールの飯館村はどのように映ったのでしょうか・・・

その後、ジオラマは飯館村にある『図図(ずっと)倉庫』にて保管・展示されているとのこと。お近くにお越しの際には立ち寄ってみてください。

【双葉町】
9月24日、双葉町にある東日本大震災・原子力災害伝承館でジオラマのワークショップを行いました。
伝承館の近くにもかつて人家がありましたが、あの津波が襲い、いまは企業団地へと整備されつつあります。

ワークショップは午前と午後、伝承館を訪れた方々を対象に行われ、2回目は宮城教育大学の学生さんたちも一緒でした。周辺の災害リスクはやはり津波。現在のハザードマップには東日本大震災のときよりも広い範囲に色がついており、いざというときの避難場所などを確認しました。

今回のワークショップでは原子力災害への備えについて詳しくは触れませんでしたが、伝承館の展示を見るにつけ、たとえば広域のジオラマを用いて、今後そうした課題にも取り組めたらという思いを持ちました。折しも館内ロビーでは飯館村のパネル展が行われており、震災前の村の様子や現在の帰村状況などが説明されていました。

飯館と双葉、ふたつのジオラマからあらためて思ったのは、直線距離にして30kmほど離れた別々の場所が、同じひとつの事故で結びついてしまったということ。そしていまもまだ、それは終わっていないということ。電力の恩恵を受けて暮らす者として、その怖さについて正しく知り、しっかりと考えいく責任が私たちにはあります。
一方でジオラマはまた、これからどうやって地域を元気にしていくか、皆でそういったことを考えるときにも大いに力を発揮します。未来に向けて、この段ボール製のジオラマがいろんな人たちに囲まれて、身近で楽しく活用されていくことを心から願っています。