地形とまちの成り立ちに目を向ける防災学習 〜仙台市立鶴が丘小学校〜

仙台市立鶴が丘小学校があるのは、鶴が丘ニュータウンと「県民の森」が隣り合う、丘の上の住宅地です。北側には県民の森の緑が広がり、少し下ると川沿いの田んぼや低地がひらけていて、山と平野のあいだに暮らしの場がつくられてきた地域です。
そんな鶴が丘の特徴をいかしながら、子どもたちは段ボールジオラマを通して、自分たちのまちの姿を立体的に見つめ、防災についての学びを深めていきました。

鶴が丘のまちを立体で組み立ててみる

授業の前半では、地図をもとにまちの形づくりに挑戦しました。
山地・丘・川・田んぼ・住宅地……それぞれのパーツを重ねていく中で、子どもたちからは、
「県民の森のほうから、ここで急に坂がきつくなってる」
「川のほうに向かって一気に下がっているから、水が集まりやすそう」
といった、地形の変わり目に目を向けたコメントも聞こえてきました。
住宅街の部分を作りながらは、
「家があるのは、ちょうど山と田んぼのあいだなんだ」
「ここに道が通っているから、通学のときはこのルートだよね」
と、ふだんの生活と重ね合わせて話す姿も見られました。
ジオラマが形になっていくにつれて、「いつも見ている景色」が「立体の地図」として目の前に現れてくる感覚を、子どもたちは楽しみながら確かめていました。

ワークを通じて見えてきた「危険」と、視点の多様さ

ジオラマが完成すると、それぞれの家やよく使う場所に小さな旗を立てていきました。
「自分の家はこの斜面の途中」「通学路はここからここまで」など、自分たちの生活がどこに広がっているのかを確かめる時間です。
そのうえで、今度は「災害が起きたときに危なさを感じる場所」に注目し、危険だと思うところに別の色の旗を立てていきました。
・山に近い急な斜面や谷筋を指さしながら、崖崩れや土砂の流れ込みを心配するグループ
・川や田んぼが広がる低地を見て、「大雨のときに水が集まってきそうなところ」を探すグループ
ここでは、大きく二つの視点に分かれて考える姿が見られました。
また中には、
「山側で崖崩れが起きて、その下の道がふさがったら、ここから先に行けなくなりそう」
と、山の斜面と道路との関係を具体的にイメージする児童や、「お家の人から、ここは昔田んぼだったって聞いたから、地面がゆるいかもしれない」と、家族から聞いた話を手がかりに、住宅地の成り立ちを気にする児童もいました。

一人ひとりの経験や記憶が、今回の地形の学びと結びつき、
「自分のいる場所」「自分の歩く道」が、災害時にどんな意味を持ちうるのかを、
じっくり考える時間になっていました。

地形から見えてくる まちの成り立ち

鶴が丘のまちは、山と川・田んぼにはさまれた丘の上にひらけた住宅地です。
今の住宅街になる前は、田んぼや雑木林が多く、造成工事を通して少しずつ現在のまち並みになってきたと言われています。
子どもたちは、地図の線や色としてではなく、立体の模型を通して「土地の形」と「まちのつくられ方」の関係に目を向け始め、たくさん話をしていることが印象的でした。
地形をたどることは、「この地域がどんな自然の条件の上に、どんな理由で家や道がつくられてきたのか」を確かめることでもあります。
今回の学びは、危険な場所をチェックするだけでなく、
鶴が丘というまちの成り立ちそのものに関心を広げていくきっかけになっていました。

鶴が丘だからこそできる、防災のまなざし

鶴が丘小学校の子どもたちは、県民の森での活動や、
丘の上から市街地を見渡すような景色に、日ごろから親しんでいます。
今回の防災ジオラマ学習では、そうした「いつもの風景」を、
・どこが高くて、どこが低いのか
・雨が降ったときに、水や土がどの方向に動きやすいのか
・その中で、自分や家族がどこで危険に近づきやすく、どこが比較的安全と言えそうか
という目で見直すことで、鶴が丘というまちを防災の視点からあらためてとらえ直す時間になりました。

防災ジオラマの授業は、模型を作って終わりではありません。
これから、県民の森での学習や、地域の防災訓練、家での会話など、さまざまな場面で「地形の視点」が生かされていくことで、鶴が丘ならではの防災の力が、少しずつ育っていくはずです。
丘の上のまちを知ること。それは、ふだんの暮らしの延長線上にある防災を考えること。
今回の学びが、鶴が丘の子どもたち一人ひとりの「見る目」となり、家族や地域へと静かに広がっていくことを願っています。