土地の変遷、地域の恵みと災害リスク ~鳴門市立桑島小学校~

12月5日、鳴門市の桑島地区自主防災会さんの企画で、桑島小学校にてジオラマの授業を行いました。
今回のジオラマはいつもとちょっと違います。桑島地区は鳴門の塩づくりの始まりの地域として知られており、その成り立ちや土地利用のうつり変わりを学べるよう、時代に沿ってパーツを貼り付けていけるような作りのジオラマになっています。鳴門チームの段取りのもと、事前の打ち合わせで町内会の方にお話しをうかがったり、地域の史料を集めたりして実現した企画です。


地域の物語はまず、海の中に浮かぶ小さな山から始まります。

やがて次第にその周りに砂浜や堆積平野ができ、人が暮らしはじめたことでしょう。

西暦1600年前後、日本は立て続けに大きな地震に見舞われます。その中の一つ、1596年の慶長伏見地震で桑島付近の海底が隆起して浅瀬(干潟)が現れたと言われています。その地形をいかして海水を引き込んで乾燥させる入浜式塩田がいくつも開発され、「塩方十二ケ村」と言われた一帯で造られた塩は「斉田塩」と呼ばれ、全国に出荷されていたそうです。

昭和30年代まで300年以上続いた入浜式塩田ですが、製塩方法の変化にともなって少なくなり、高度経済成長期の人口増もかさなって市街地へとその姿を変えていきました。

ジオラマにパーツを貼り付けながら、自分たちのまちの土地がそうした変化の歴史を持っていることを体感したら、それらをふまえて災害の危険性について考えていきました。昔塩田だった場所は埋め立てなどで地盤が固くないため、南海トラフなど大きな地震の際には揺れも激しく液状化のリスクもあることなど、「いま」だけを見ていても気づきにくいことを、歴史を知ることで子どもたちも実感することができたようです。

大きな災害を引き起こす地震や洪水はまた、土地を変化させて新たな恵みをもたらしてくれる一面も持っています。地域の歴史は地形の変化の歴史であり、それに合わせた、人々の営みのうつりかわりの歴史です。2024年元旦の能登半島地震で大規模な隆起があった能登地方もまた塩(揚げ浜式)で有名な地域ですが、今回の隆起で海が100mほど遠ざかった場所もあるそうです。
私たちの暮らしを支えている土地の地形、その大きな変化をもたらす巨大な力の前で人はなす術もありません。それらの力を正しく畏れ、恵みを享受しながらもしっかりと備えていくことが、私たちにできる自然や大地との誠実な向き合い方なのだと思います。