仙台市主催の防災ジオラマの授業の今年度3回目は秋保小学校5・6年生。小規模校ということもあり、高学年2学年揃っての授業となりました。
秋保地区は名取川の渓谷沿いに街道と町があり「仙台の奥座敷」とも言われる東北屈指の温泉郷、秋保温泉があります。その少し上流にあるのが秋保小学校です。
「秋保大滝」や「磊々峡(らいらいきょう)」など、秋保地区には、川の浸食によって出来た岩場とそこを流れる滝など、変化に富んだ地形環境があります。 秋保小学校のすぐ裏手にも急傾斜地を持つ小河川が流れているので、地形による災害の危険性を子どもたちは日常生活の中でも気づき、学習などでも共有していました。
奥座敷という言葉からもわかるように、山と山の合間を水量豊富に流れる名取川。今回のジオラマは山に囲まれた地形となる為、子どもたちの手では時間がかかるかも?…との想定も何のその。 少人数でも協力し合いながら、テキパキと、そして楽しみながら、じっくりと観察して組み上げていく姿が見られました。
今回の段ボールジオラマは、一段の厚みが実際では20m!標高の高い部分では細かいパーツが多くなります。複数の標高が集まったパネルの中、記載してある標高の数字をきちんと確かめ、組み上げた下段の中の空白スペースの形を意識しながら組み上げていきます。
空間認知とコミュニケーションを一緒に使うこの作業は、座学だけでは学べない知的好奇心や、空間認知能力を楽しむことによって、その能力をくすぐる力を持っているかもしれません。 (余談ですが、空間認知能力を高めると運動や交通安全に結びつくとも言われていますよ!)
ジオラマを組み上げていく子どもたちの作業風景では「山の中に池がある!」「川がすごく低い!」
自分たちの生活の目線ではなかなか見られないもの、気づかないことに「鷹の目」で気づいていく子どもたち。そして、通学路や暮らしを思い出して「(住んでいるのは)平らな場所だよね」「学校の近くには崖みたいな川がある」なんていう言葉も出てきます(川が作った段丘と段丘崖への気づき)。 自分たちのまちの中にある水源の豊富さや川のはたらきを改めてジオラマから感じていました。
実はこんな山地でも仙台市のハザードマップで気づく「知らない災害」がありました。それは内水氾濫です。子どもたちが平らだと気づいた場所には小河川があり、都市部とはまた違った内水氾濫で水の溜まりやすい場所があったのです。
その災害の想定がある場所には住宅がありません。あるのは田んぼです。今では堤防で守られている川ですが、昔は川が氾濫することで、運ばれた山の養分が農地に拡がり稲作に適した土壌にしてくれるなど、災害(正確には自然の作用)には私たちの暮らしを支える側面もありました。
山地に囲まれた段丘に広がった田んぼは、秋保地区の人の文化も育んでいます。それは ユネスコ無形文化遺産となり秋保小学校の子どもたちが取り組んでいる「秋保の田植踊」。
学校での学びが一つ一つ個別のことではなく、実は災害や防災とも、地域の文化や、自然の豊かさとも繋がっているとジオラマを通じて気づいてくれたでしょうか。防災ジオラマは地形を知り、まちと災害を知り、いのちを守るだけではなく過去(成り立ち)を知り、今(災害)を見つめながら、その先の暮らしへ、仲間と共に繋がっていくツール。
秋保小学校の子どもたちがこのジオラマを通じて、もっとこの秋保地区を好きになってくれる事を願い、ジオラマは小学校で沢山活用される予定となっています!
【授業後のアンケートのコメント(抜粋)】
- 災害がきたらこの授業を思い出して避難できたらいいなと思います。
- とても勉強になった。うちから学校まで遠いと分かった。
- 自分の地域の危ない所を確認できた。
- 普通の地図より、立体だから、見やすいし分かりやすかった。
- 家の近い所で内水が起こりやすいことを知った。
- 秋保に引っ越してきたばかりで地形の事を知らなかったけど、危険な所がジオラマでよく分かった。